第五章 小児の推拿手法


第二節 常用手法とツボ


五、下肢の手法



1.推箕門
 (大腿内側)
 〔位置〕 大腿前内側、膝蓋骨内上縁から鼡径溝の間。
 〔手法〕 示指・中指二指の指腹で、膝蓋骨内上縁から直線的に軽擦して鼡径溝に至る、反復操作100~300回。
 〔主治〕 尿貯留(尿の出が悪い)、水瀉(水様便)、小便赤澀不利(小便が赤くて出にくい)。
 〔臨床応用〕 推箕門の性質は穏やかで、利尿作用が割りにあります。尿貯留(尿の出が悪い)に用いるときには多く揉丹田圧迫揉捏三陰交を配合します。小便赤澀不利(小便が赤くて出にくい)に用いるときには、多く清小腸を配合します。



2.拿足膀胱
 (血海穴上6寸)
 〔位置〕 血海穴上6寸処。左は膀胱、右は命門と言う説があります。
 〔手法〕 母指の指腹で拿捏(把握揉捏)3~5回。
 〔主治〕 尿閉。


3.拿百虫
 (膝蓋骨内上縁2.5寸)
 〔位置〕 膝蓋骨内上縁2.5寸。
 〔手法〕 母指で圧迫揉捏30~50回、拿(把握揉捏)3~5回。
 〔主治〕 四肢抽搐(チク)(ひきつけ)、下肢痿軟(麻痺)。
 〔臨床応用〕 下肢不随および痺痛(麻痺疼痛)などに用いるときには、常に拿委中按揉足三里と共に用います。驚風(ひきつけ)、抽搐(チク)(ひきつけ)に用いるときには、手法の刺激は重いのが宜しいです。



4.按揉足三里
 〔位置〕 外膝眼下3寸、脛骨外側縁。
 〔手法〕 母指の指腹で圧迫揉捏30~50回。
 〔主治〕 腹脹(お腹が脹る)、腹痛、便秘、吐瀉(吐き下し)、下肢痿症(麻痺)。
 〔臨床応用〕 多く消化系統の疾病に用います。常に推天柱骨分推腹陰陽を配合して嘔吐を治療します。上推七節骨補大腸を配合して脾虚腹瀉(腸が弱くて下痢する)を治療します。捏脊摩腹を配合して小児保健を行います。



5.按膝眼
 (按鬼眼)
 〔位置〕 膝を90°に屈して、内外膝眼。
 〔手法〕 両手の母指あるいは母指・示指で圧迫揉捏30~50回、ゆび針3~5回。
 〔主治〕 驚風(ひきつけ)抽搐(チク)(ひきつけ)、下肢萎軟(麻痺)。



6.コウ揉前承山
 〔位置〕 膝下8寸、脛骨外傍で後ろの承山と相い対する部位。
 〔手法〕 母指あるいは中指のゆび針5回、揉捏30回。
 〔主治〕 驚風(ひきつけ)、下肢抽搐(チク)(ひきつけ)。
 〔臨床応用〕 常に拿委中拿百虫掐解渓と共に用います。角弓反張(痙攣してえびぞり)、下肢抽搐(チク)(ひきつけ)を治療します。



7.按揉三陰交
 〔位置〕 内踝の尖ったところから直上3寸。
 〔手法〕 母指あるいは中指の先端で圧迫揉捏100~200回。
 〔主治〕 遺尿(夜尿)、驚風(ひきつけ)、小便不利(小便がでにくい)、消化不良。
 〔臨床応用〕 本法は能通血脉(血液循環を改善)、活経絡(経絡を活性化する)、疏下焦(下腹部臓器の通りをよくする)、利湿熱(湿熱をさます)、助運化(消化吸収を助長する)。もし泌尿系統の疾病を治療するときには、常に揉丹田推箕門と共に用います。



8.コウ揉解渓
 〔位置〕 足関節前横紋の中点、両筋の間陥凹部。
 〔手法〕 母指でゆび針3~5回、指頭揉捏50~100回.
 〔主治〕 吐瀉(吐き下し)、驚風(ひきつけ)、足関節屈伸困難。



9.コウ大敦
 〔位置〕 足親指の外側爪甲根部と指節関節の間。
 〔手法〕 母指でゆび針5回。
 〔主治〕 驚風(ひきつけ)。



 10.拿委中
 〔位置〕 膝を屈して、膝窩横紋の中点、両筋の陥凹部。
 〔手法〕 示指・中指の先端で緩やかな力をもって、そこの筋肉と腱に提拿(持ち上げるような把握揉捏)と勾撥(ゆびを曲げて弾く)を3~5回。
 〔主治〕 驚風(ひきつけ)、下肢痿軟(麻痺)、腰部功能受限(腰部の機能制限)。



 11.拿後承山
 〔位置〕 腓腹筋の筋肉が腱に移行する境目で、足を背屈した時に現れる『人字』の陥凹部。
 〔手法〕 示指と中指あるいは母指でツボを拿(把握揉捏)5回。母指の指腹で上に向けてあるいは下に向けて直推(真っすぐに軽擦)100~300回。
 〔主治〕 腿痛転筋(下肢の痛みと腓腹筋痙攣)、下肢痿軟(麻痺)、腹痛、腹瀉(下痢)、便秘。
 〔臨床応用〕 常に拿委中を配合して驚風(ひきつけ)抽搐(チク)(ひきつけ)、腿痛転筋(下肢の痛みと腓腹筋痙攣)、下肢痿軟(麻痺)を治療します。このツボを上推(上に向けて軽擦)すれば腹瀉(下痢)を止めることができますし、下推(下に向けて軽擦すれば)便通をよくします。



12.コウ僕参
 〔位置〕 かかとのところ、外踝の後下陥凹中。
 〔手法〕 母指でコウ拿(把握してつめ針)3~5回。
 〔主治〕 昏厥(失神)、驚風(ひきつけ)。



13.コウ崑崙
〔位置〕 外踝の尖ったところとアキレス腱の中点陥凹部、僕参穴の上方。
〔手法〕 母指でゆび針3~5回。
〔主治〕 驚風(ひきつけ)。



14.揉湧泉
 〔位置〕 足底の前と中と三分の一の境界で中央陥凹部。
 〔手法〕 母指の先端で揉(揉む)50~100回;捏(こねる)3~5回。湧泉から母指に向かって直推(真っすぐに軽擦)50~100回。
 〔主治〕 発熱、吐瀉(吐き下し)、目赤、虚熱盗汗(消耗性の熱と寝汗)。
 〔臨床応用〕 揉湧泉は吐瀉(吐き下し)を治療できますが、一般に左に回旋しながら揉むと止吐(嘔吐を止める)、右に回旋しながら揉むと止瀉(下痢を止める)になると認められています。推湧泉には引火帰元(のぼせを引き下げる)、退虚熱(消耗性の熱を引かせる)効能がありますから、主に五心煩熱(胸と手のひら足の裏のわずらわしい熱感)、煩操不安(イライラと落ち着きが無く不安)などの治療には、常に与揉二馬運内労宮と共に用います。、もし退六腑清河水を配合すれば実熱(熱)を退かせる効果を増加できます。


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