第三章 関節運動類手法


第五節 下肢の関節の運動法


1.股関節内旋法
  患者は仰臥位で、健側の股関節は伸ばし、患側の股関節は曲げます。術者は患側に立ち、一方の手で患側の膝関節の外側をおさえ、別の手で足関節の内側をおさえ、両手を同時に反対向きに動かして、股関節を内旋させます、反復5〜10回、或いは病情に基づいて増減します。この方法は股関節の内旋機能に制限がある病症に適応します。たとえば、梨状筋症候群、骨折後遺症、臀筋筋膜炎など。



2.股関節外旋法
  操作する体位は股関節内旋法と同じです。術者は先ず患側の下腿を健側の大腿の遠位端にのせます、その後一方の手で患側の膝の内側をおさえ、別の手で足関節の上端の足首を握り、股関節を外旋させます。反復5〜10回。適応は股関節の外旋機能が制限される病症、たとえば骨折後遺症、仙腸関節炎、臀筋筋膜炎などです。



3.仰臥位股関節回転法
 患者は仰臥位で、患側の股関節と膝関節を屈曲し、健側の大腿は伸ばします。術者は患側に立ち、一方の手で患側の膝頭をおさえ、別の手でくるぶしの上端を握り、両手で協同して股関節に対して時計回り逆時計回りに回転、各5〜10回。股関節の機能が制限されている病症に常用します。たとえば腰臀筋筋膜炎、骨折後遺症、風湿性関節炎の安定期、仙腸関節炎など。



4.伏臥位股関節回転法
 患者は伏臥位で、両下肢をまっすぐ伸ばします。術者は患側に位置して、一方の手で患者の腰部をおさえ、別の手で患側の大腿の遠位端を支えて、患側の下肢を時計回り逆時計回りに回転します。各5〜10回。



 或いは患側の膝を90°曲げて、術者は両手で下腿の遠位端を握り、患側の大腿を持ち上げた後、股関節の回転運動を5〜10回行います。適応症は仰臥位での股関節回転法と同じです。






 5.膝屈曲の股関節屈曲法
 患者は仰臥位で、患側の股関節と膝関節を屈し、健側の大腿を伸ばします。術者は患側に立ち、、一方の手で患側のくるぶしを握り、別の手で膝の下方をおし、膝をおしている手を主に動かすようにして、両手で患側の股関節を限度まで前屈して、大腿を腹の外方に近づけます。反復5〜10回。適応は仙腸関節病および股関節の前屈機能が制限されている者です。



6.膝伸展の股関節屈曲法
  患者は仰臥位、両下肢は伸ばします。術者は患側に立ち、一方の手で患側の大腿の前方をおさえ、別の手の肘窩で下腿の後方をはさみ、そして両手に反対方向の力を加えて、下肢をゆっくりと最大限度に達するまで挙げていきます。助手に頼んで足を緩やかに3〜5回背屈してもらいます。
 もし助手がいない時には、術者は一方の手で患側の大腿部と膝を抱えて膝関節を真直ぐに保って、別の手で足を3〜5回背屈させます。
 下肢を挙げていくときには、患者には全身の力を抜いてもらい、健側の下肢は真直ぐに伸ばしておき、患側の臀部は浮き上がらないようにし、主に術者の操作によって動くようにします。反復3〜5遍。この方法は下肢を真直ぐに挙げる機能を改善し、腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の治療に常用します。



7.伏臥位股関節伸展法
 患者伏臥位、術者は患者の側方に立ち、一方の手で患側の腰仙部をおさえ、別の手で患側の膝蓋骨の上端を支え、患側の下肢をあげて股関節を伸展します。反復3〜5回。適応は股関節の伸展機能が制限されているものです。



8.両股関節内転法
  患者は仰臥位で両方の下腿を交叉してすこし屈曲する。術者は側方に立ち、両手でそれぞれ患者の両膝の外側をおさえて、一方は推し、他方は引っぱって持続して、両方の股関節を最大限度まで内転させる。反復3〜5回、毎回10〜20秒。適応は股関節の内転機能制限の病症、たとえば類風湿性関節炎の後期、骨折後遺症など。



9.両股関節外転法
  患者は仰臥位、両膝を屈曲して外転し、足底を相対します。術者は側方に立ち、両手でそれぞれ患者の両膝の内側をおさえて、一方は推し、他方は引っぱって10〜20秒持続して、股関節を最大限度まで外転させます、反復3〜5回。適応は両股関節の外転機能制限の病症、たとえば股内転筋の攣縮、骨折後遺症、類風湿性関節炎の後期など。



10.股関節緩慢牽引法
  患者は仰臥位或いは伏臥位で、両手でベッドの端或いはベッドの頭をつかんでおきます。術者は患者の足の後方に立ち、両手で患側の足関節の上方を握り、身体を後に倒す力を利用して、患者の股関節を1分間持続して牽引します、反復3〜5回。適応は両股関節の外転機能制限の病症、たとえば大腿内転筋の攣縮、骨折後遺症、類風湿性関節炎の後期など。



11.股関節急激牽引法
  膝伸展の股関節屈曲法の操作体位で、両手で患側の股関節と膝関節を少し屈曲させておいて、急激に後上方に向けて牽引し同時に60〜70°あげます、反復3〜5回。







 股関節の牽引法の適用は坐骨神経痛、腓腹筋痙攣、腰臀筋筋膜炎、股膝関節筋肉攣縮などの症。ただし股膝靭帯損傷或いは弛緩には、急激股関節牽引法は禁忌です。



 12.膝回旋法
  患者は伏臥位或いは仰臥位で、患側の膝を半分屈曲(110〜130°)します。術者は患側に立ち、両手を分けて患側の足関節の上端の前後をもって、横方向に一方の手は推し他の手は引っぱって、膝関節を回旋させます。反復10〜20回。膝関節の回旋機能を改善する作用があります。



13.膝回転法
  患者の体位は膝回旋法と同じです。術者は患側に立ち、一方の手を患側の大腿の後の下端において固定しておき、別の手で足関節の上端を握り、下腿を時計回りと逆時計回りに回転します。各10〜20回。膝関節の捻挫と軽度の機能障害に常用します。



14.膝屈曲法
 患者はベッド上に仰臥するか或いは座り、両方の下腿をベッドの端に垂らす、患側の膝窩部には柔らかいクッションをおきます。術者は一方の手の前腕で患側の大腿をおさえて固定し、別の手で足関節の上端を握って、下腿を大腿後側に向って緩やかにおします。反復10〜20回、或いは病情によって斟酌します。この方法は膝関節の屈曲機能の障害に適応します。たとえば、骨折の後遺症でギブス固定によって起った伸直性の強直、類風湿症の後期など。

もし膝関節の機能が正常な者には、仰臥位による膝屈曲の股関節屈曲法(図144);




 伏臥位で紮(挿入圧迫)による膝屈曲法(図17)を用います。



15.膝伸展法
  患者は伏臥位で、健側の脚は伸ばし、患側の膝蓋骨のところにクッションを敷きます。術者は一方の手で患側の大腿後面をおさえて固定し、別の手で足関節の後上方をおさえて緩やかな力で下腿をおして、膝関節を伸展させます。反復10〜20回、或いは病情に基づいて増減。この方法の基本は膝屈曲法と同じです。適応は膝関節の伸展機能障害です。
 もし、膝関節の機能が正常な者には、仰臥位での膝伸展法を使います。一方の手で膝の上方をおさえ、別の手で下腿の後下方を支えて、両手の力を反対向きに用いて、膝関節を伸展します。伏臥位での膝伸展法ならば、一方の手で足関節の後方を握って下腿をおし、膝関節を伸展します。



16.膝牽引法
  患者は伏臥位で、患側の膝は曲げて健側の脚は伸ばします。術者は患側に立ち、一方の足の膝をかがめて患側の大腿の後下方を圧しておいて、両手で足関節の上端を握り、上に向けて10〜20秒持続して牽引します、反復3〜5回。適応は膝関節の攣縮、捻挫、軽度の機能障害などです。



17.足関節回転法
  患者は坐位或いは仰臥位。術者は患側に位置して、一方の手で足関節の上端を握り、別の手では足の中足骨のところを握り、足関節を15〜30°背屈した後、時計回り逆時計回りに回転します、各5〜10回。適応は足関節捻挫および軽度の機能障害です。



18.足関節屈伸法
 足関節回転法とおなじ操作体位をとり、足関節の屈曲と伸展を各5〜10回します。或いは一方の手で患者の下腿の前下方を握り、別の手で足の甲を握って足底方向に推して、足関節を底屈させます、5〜10回。適応症は足関節回転法と同じです。



 19.足関節牽引法
 患者は坐位或いは仰臥位で、両手を組んで患側の大腿の遠位端を抱え、膝関節を少し屈曲します。術者は一方の手でかかとを握り、別の手で足背を支え、緩やかな力で足の後に向けて30秒間持続牽引します。反復3〜5回。適応は足関節の筋腱の攣縮、捻挫など。


目次一覧表

HOME BACK