第三章 関節運動類手法


第三節 肩関節の運動法


二、肩関節回転法

 肩関節の外転、上方挙上と背中に触れる運動の三種の主要な機能が制限を受けて正常な活動範囲に達しないものは、肩関節機能障害として三等級に分けます。肩関節の活動の幅が正常範囲より低く、上方挙上の高さが120°、外転の高さが80°、背中に触れる運動で母指が第十二胸椎棘突起以上に達するものは、軽度の機能障害とします;上方挙上が90°より低く、外転が50°より低く、背中に触れる運動で母指が第五腰椎棘突起に達しないものは、重度機能障害とします;この二者の間を、中度の機能障害とします。



1.側方肩関節回転法
 患者は腰掛け座位で、患肢の肘関節は伸ばします。
 術者は患側に立ち、片方の手で患肢の手首を握り、引っぱります。別の手の手背を患肢の前腕の近位端にあてがいます。








 両手で協同して患肢を120°に上げたときに、前腕を支えている手を内旋して、改めて手掌で前腕を支え少しずつ手首にまで滑らしながら患肢を上げ続けます。









 同時に初めに手首を握っていた手で改めて患側の肩をおさえて、肩関節を保護すると共に安定させます。患肢を上方挙上した後、腕を伸ばしたまま降ろして初めの位置に返り、肩関節を保護している手も返えして再び患肢の手首を握り、別の手は手背で患肢の前腕を支えます。このようにして10〜20回まわします。もし反対向きにまわすときには、術者は体位は変えずに、ただ両手の位置を変えればよいです。この法は主に肩関節の前屈、上方挙上、外転と後方伸展の四つの連合動作です。肩関節機能の軽度障害或いは正常な者の病症治療に適応します。






2.前方肩関節回転法
  患者は座位で、術者は患者の前方に立ち、左手或いは右手の中、環指を患者の相応する手指にひっかけて、患肢を引っぱって内転させた後、時計回りと逆時計回りに大きく回します、各々10〜15回。この法は主に肩関節の内転、上方挙上と外転の三つの連合動作となります。適応は肩関節機能の中軽度の障害の治療です。


3.後方肩関節回転法
 患者は座位で、患肢の肘関節を伸ばします。
 術者は患側の後方に立ち、一方の手で患側の肩を支え、別の手で患肢の肘部の上端を握り、患肢を時計回り逆時計回りに各々10〜15回まわします。。この法は主に肩関節の前屈、上方挙上、外転と後方伸展の四つ連合動作となります。操作は簡便で、まわす幅は大きくても小さくてもいいです。適応は肩関節の各等級の機能障害或いは正常者の病症の治療です。


4.頭上肩関節回転法
 患者は座位で、患肢の肘関節は屈曲します。
 術者は患者の後方に立ちます。片方の手で患肢の肘を支え、別の手を健側の頭の傍らから胸の前にのばして患肢の手をひっぱります、両手を協同して患肢を前屈内転させた後、時計回りと逆時計回りに各々10〜15回まわします。一回まわすごとに、患肢の手と前腕は患者の頭頂の上方或いは額の前上方を環を描いて一巡します。この法は主に肩関節の前屈、内転、上方挙上と外転の四つ連合動作となります、上腕二頭筋腱を牽引する力は小さく、そして肩の筋肉に対する牽引力は比較的大きいです。適応は肩関節の各等級の機能障害の病症の治療です。とりわけ、髪を梳いたり、対側の耳に触ったりすることが難しい老人性の患者に適応します。



5.肘を支えた肩関節回転法
 患者は座位で、肘関節を屈曲します。
 術者は患側の前方に座るか立つかして、片方の手で患側の肩をおさえ、別の手の前腕で患肢の肘を支え、手でその上腕の遠端をにぎり、時計回りと逆時計回りに各々10〜15回まわします。この法は主に肩関節の前屈、内転、外転の三つの連合動作となります。回転するときの肩関節の上方挙上と外転はともに90°以下なので、回転の幅は大きくありません。適応は肩関節の重度或いは中度の機能障害の病症です。



6.低く引っぱる肩関節回転法
 患者は座位で、術者は患側に立ち、一方の手で患側の肩をおさえ、別の手で手首或いは四指を握り、或いは中・環指を相応する手指に引っかけて、患肢を真っすぐ引っぱった後、時計回りと逆時計回りに各々10〜15回まわします。この法は主に肩関節の前屈、内転、外転と後方伸展の四つ連合動作となります。まわす時の上方挙上と外転はともに90°前後で、術者の腕のまわる幅は大きいのですが、患者の肩関節の活動の幅は大変小さいです。ですから、適応は肩関節の中度或いは重度の機能障害の病症です。


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