第三章 関節運動類手法


第七節 救急時の胸郭運動法


一、人工呼吸胸部圧迫法



 人工呼吸胸部圧迫法は人工呼吸法の一種で、主に何らかの原因で突然の呼吸停止を引き起こした病人を救うために用いられます。この方法を使って充分な酸素を供給し、二酸化炭素を十分に排出して、直ちに自然呼吸を回復させるのです。
 施術の前に病人への一般的な措置として:まず病人を空気の流れの良い所に横たえて、着衣を緩め、口内の異物及び入れ歯を取り除きます;舌が後ろに向かって咽喉部を塞ぐことがないように、舌鉗子で舌を口の外に出し、さらに開口器で口をひろげます;病人の頭の下に枕をする必要はありません、頭が少し仰向くようにして、片側に向けて、気管がまっすぐになるようにします。



1.仰臥位胸部圧迫法
  患者は仰臥位、背部にクッションを敷き、患者の肩及び頭をやや低くして、頭を片側に向けます。術者は両大腿を開いて騎馬姿勢をとり、患者の大腿の両側に跪きます。両方の手のひらを患者の胸の下部の両側に分けて置きますが、母指は剣状突起付近に、その他の四指は分けて肋骨上にくるようにします。そうして身体を前に倒して、身体の重力を利用して、手のひらを少し上に向けて推しかつ下に圧迫し、2秒間持続します。それで肺内に残った空気を排出させます、これが呼気です;次には上半身を起こして、手のひらを緩めて、胸郭を元に戻し、2秒間持続します。これが吸気です。この周期を、15〜18回/分の速度で繰り返します。圧力は必ず患者の胸郭の肋骨弓上に施し、圧を加えるときに激しい力を使って肋骨を骨折することのないようにします。圧力の方向は地面に対して垂直にならないようにし、前下方から後上方に向かって圧さなくてはなりません。この法は伏臥位をとれない病人に適用し、入院患者には大変便利ですが、病人の口腔中の異物を排出するのが困難です。(図161)



2.伏臥位胸部圧迫法
  溺れた者は肺内と胃内に水が溜っていますから、患者を伏臥位にすべきです。骨盤の下に高さ10〜16センチの物を敷くか、或いは傾斜したところに横たえて、頭を低くし足を高くして、頭をやや片方に向けて、溜った水が外に向かって流れ出やすくします。術者は両方の手のひらを患者の背側の胸部の最下部の一対の肋骨上に分けて置き、交替に下に圧したり緩めたりします。操作方法と注意点は仰臥位胸部圧迫法と同じです。(図162)



3.仰臥位上肢牽引法
 患者は仰臥位、腰背部にクッションを敷きます。術者は患者の頭の後ろに位置して、両手でそれぞれ患者の両方の前腕を握り、先ず患者の胸の下部両側に向けて圧しますが、これが呼気です。それから緩慢に両方の上肢を上に挙げていき肋骨を高くして、胸腔の前後の径を増加させます、これが吸気です。毎分12〜16回。この法は溺水したり骨折した病人にはともに不適当です。


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