第一章 概述



一、推拿と推拿手法
 推拿とは、医者が訓練を経て技能を掌握している両手およびその他の肢体を用いて、患者の体表の一定部位を病と人により選択して、力を運用する操作を行い、適合した刺激量を与える一種の医療方法です。推拿はまた按摩とも言いますが、中医学の重要な構成部分で、医療学の中では際立った特色のある一部門の学科です。推拿による治病の大多数はその場で効果が現われ、患者には気持ちがよくまた安全であり、薬を飲んだり針を打ったりしなくても、多くの疾病を治癒することができます。
 推拿手法とは、推拿的操作方法と技巧のことです。推拿医師にとっての手法は、西医の薬物や医療機器と同じようなものです。疾病を診断して治療方法を確定したあとは、手法技巧の優劣と熟練程度が、治療効果を決める鍵となります。



二、手法の分類
 推拿手法の名称はやたらと多く、その中には手法は同じなのに名称が異なるもの(同法異名)や手法は異なるのに名称は同じもの(異法同名)といった現象が少なからずありますし、ある手法の中のある一つの動作に名称をつけられると、手法の概念を混乱させ、初学者に困難をもたらしています。手法を学習したり研究するために、手法の人体に対する生物力学的作用の基づき、手法を七類に分類します。
  1.皮膚に対してはっきりした摩擦(こする)作用を有する手法を、摩擦類(軽擦法)とする。
  2.筋肉に対してはっきりした揉動(もみうごかす)作用を有する手法を、揉動類(揉捏法、揉撚法)とする。
  3.主に体内の軟部組織に向かって圧力で擠圧する(おす)手法を、擠圧類(圧迫法)とする。
  4.主に体内の軟部組織に対して上提力(つまんで上にあげる力)で外に向かって牽拉(ひっぱる)する手法を、提拿(テイナ、つかみあげる)類(把握法)とする。
  5.軽快でリズミカルな衝撃力で身体を刺激する手法を、叩撃類(叩打法)とする。
  6.気力を肩から手首まで運用して、患者の体表には接触或いは接触しないで操作して、治療部位を振せんさせるか或いはいくつかのある種の得気を起こさせる手法を、運気推拿類とする。
  7.関節の各種の他動的な運動手法を、関節運動類とする。
 前六類の主要な作用は軟部組織に対するものなので、基本手法の一章としてまとめ、七の主要な作用は関節に対するものなので、また手法の数が比較的多いので、それだけで一章とします。人体の異なる部位に特殊な作用を持つ特定の手法は、部位別手法として、また別に一章を設けます。小児推拿の手法は、最後の一章とします。



三、手法の学習法
 推拿手法を学習したり、推拿手法を応用して治療するためには、特殊な設備はいりません、ただ両手に頼って、家庭で行うことができます。推拿の愛好者としては、一定の一般知識を有し、身体素質が健康でさえあれば、図を見て短期間練習すれば、多種類の手法を習い覚えることができるし、いくつかの常見病については、親族や他人の治療をすることができます。一般の医師で、すでに医学的知識と診断技能があるものは、ただ常用手法を学び覚えれば、推拿の医療的な施術を担当することができます。推拿を専業としようとするものは、本書に従って、まだ掌握していない手法を学習し、重ねて手法の系統的概念、操作方法の要領、その適応症などを学習し、専門的な技術水準を一歩一歩高めていかなくてはなりません。
 学習方法と必要な心得:
  1.順序だって、重点をきめて 先ず基本手法と関節運動類の手法を学習し、それから部位別手法を学習します。基本手法の章節では、揉動(もみうごかす)類手法を重点的によく学習した後に、その他の五類の手法を逐一学習します。関節運動類の手法の章節では、頚、肩、腰の関節運動の手法を重点的に学びます。部位別手法の章節では、頭頚部と躯幹部の部位別手法を重点に学びます。各類の手法の中から、先ず1〜2種の代表的な手法を習い覚えて、家族或いは病人を試しに治療してみて、その治療効果を観察すれば、自分の学習成果が分かるので、学習に対する興味を高めることができます。
  2.手法と医学理論の学習を平行して 医師でない者の学習のはじめ方としては、毎日1時間ほど手法を練習し、同時に一定時間、医学の基礎理論と推拿による常見病の検査診断技能を学習すべきですが、とりわけ中医学の基礎理論と経絡学説を学習しなくてはなりません。
  3.練功を堅持して、手法を行う素質を高める 練功と体質の鍛練によって手法を逐次進歩させ柔軟、深透、持久、有力を達成することができます。少林内功、易筋経及び関係する気功などを選ぶとよいです。長期にわたって練功すれば、手法から気功の作用が生まれ、治療効果を強くすることができます。

 手法の練習はどうすればよいか?  推拿手法のほとんどは難度は高くありません、短期間の練習で基本は掌握できます。少数の技巧性の比較的強い手法、たとえば一指禅法、滾法、指叩法、運気推拿法などは、まず砂袋の上で線習すべきです。砂袋の規格は、長さ30センチ、幅20センチ、内に清潔で細かな砂に少量の砕いた海綿を加えて、口を封じたあと濃い色の布のカバーをつければ出来上がりです。一指禅法と滾法は砂袋上の練習時間を比較的長くとり、先ず手法の姿勢要領を練習し、手指の関節が柔軟になるのを待ってから、手法の持久力、強度と柔軟性を練習します。各種の手法の練習は、すべて両手交替に行い、片方の手に偏ってはなりません。手法技巧の基本を掌握したら、自分の身体で或いは学習仲間の間で相互に練習し、その後、風湿症の患者の肩背腰殿部で試しに練習し、手の下の感覚を体得し、患者の反応に注意し、患者に受ける感じと治療効果についてたずねます。


訳者注:手の各部の名称
中国推拿での名称


日本あん摩での名称


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